郡和子のコラム

2006年12月27日(水)

私たちは歯車の歯ではない、人間だ

労働政策審議会労働条件分科会は「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」をとりまとめた。
労働市場のさらなる規制緩和を求める財界の要請を受け、日本版ホワイトカラー・エグゼンプション制度を含む労働時間制度及び労働契約法制について法整備を行うことを提言している。

これまでの急激な規制緩和が労働環境をどれほど壊してきたかは、ご承知の通りだ。
派遣法の導入、時間外規制の緩和…。
結果、正社員は世界で類を見ない長時間労働を課せられ、年休など取れるわけがなく、過労死が次々起こり、非正規の労働者は低賃金で働かされ、「多様な働き方」などど言う言葉のもとで、使い勝手の良い非正規の雇用が増大し、ワーキングプアの問題も露呈した。挙句、中小企業弱小企業はバタバタとつぶされ、大企業の一人勝ち。企業主のモラルも低下する一方で、儲けだけに走り、偽装○○、○○偽装が発覚しているではないか。

私たちは、今月6日に、「はたらき方調査会」の細川律夫会長名で「民主党のめざす労働契約法案と労働時間法制」の中間報告をまとめた。
さまざまな団体からのヒアリングを重ねて練り上げたものだ。
「労働契約とは何か」「労働時間の規制はなぜ必要なのか」という原点に立ち返り、労働者個人であっても、企業と実質的に対等に交渉できるための公正で透明なルールを提示したうえで、ワーク・ライフ・バランスをとりつつ、安心して、安全に、健康でいきいき働くことができる社会の実現を提起したのだ。

通常国会では政府がこの分科会の報告書をもとに「過労死促進法」ともいえる悪法を準備するだろう。
しっかり戦っていく。
私たちは歯車の歯ではない。人間だ。


2006年12月16日(土)

白紙委任したのでしょうか?

教育基本法が書き換えられることになりました。
なぜ「今」?なぜ「公」重視?疑問は何一つ明らかにならないうちに、数の力で押し切られてしまいました。
とても悔しく残念でなりません。

衆議院では中央公聴会で慎重・反対意見が続出したその日に強行採決、参議院では、与野党の合意がないまま審議が打ち切られ採決が強行されました。
皆さんもご承知のように、タウンミーティングで「やらせ」「サクラ」による世論誘導が行われ、19億9000万円もの血税が浪費されていた実態が明らかになっています。総理が給与を100万円あまり返納するとのことですが、その血税の穴埋めには500年かかる計算になるといいます。

「個」よりも「公」を重視する教育の危うさは、過去の歴史を振り返れば、「お国のために…」と暗い影をさす恐ろしさを感じずにはいられません。加えて、この先に、憲法改正が待っているのですから…。
本来、教育基本法は憲法と不可分一体のもので、憲法の改正があってこそ初めて改正される、というもののはずですが、その議論も全くなされませんでした。

安倍内閣は「いざなぎ景気」を超える好景気だとキャンペーンを行っていますが、消費は一向に上向きません。一般家庭の所得は減り続け負担が増やされるというダブルパンチに襲われています。
また、格差の拡大は「再チャレンジ」との言葉が空虚に聞こえるほどこの国に貧困層を増加させました。
その上、生活保護基準の見直しなど憲法の定める私たち一人ひとりの「生きる権利」さえも脅かし始めています。

皆さんは、昨年のあの「郵政選挙」ですべてを白紙委任されたのでしょうか?
そうではないはずです。

今国会では、貸金業法やしょうがい者自立支援法、また、難病対策医療費の政府負担では、民主党が与党を戒めリードした部分もありましたが、圧倒的な数の違いは「権力の暴走」に歯止めをかけるにはあまりにも力不足です。
たとえ、市民の皆さんが大きな世論を作ってくださっても、です。

本当にこれでいいのでしょうか?

荀子の言葉に「水は舟を浮かべ、また舟を覆す」というのがあります。
水は有権者、舟は政権。
いい政権を担ぎ、駄目な政権をひっくり返せる力を持つのは、そう、有権者の皆さん一人ひとりです。
それを忘れないで下さい。

来年の参議院選挙での与野党逆転を、そして生活者の立場に立った政治を実現するための政権交代へ向け、大きなうねりを作らなければならないと、そう感じる国会最終盤です。


2006年12月11日(月)

診療と研究

先日、「最善の医療を手に入れる制度つくり勉強会」のことを日記に書いた。
その中で、知らぬうちに臨床試験で人体実験に参加させられている恐れについても言及した。
日記をお読みいただいた方から、そういう事例があればはっきり説明して欲しいとのご連絡をいただいた。

がん治療において、インフォームドコンセントが十分でなく、裁判になった事例がある。

たとえば、A県で。
医師が卵巣がんの患者に対して、薬事法に基づく承認前の治験薬を投与したところ、骨髄機能に重いしょうがいを来たし、血小板の減少、白血球の減少などを起こし死亡した。この件は、治験の被験者として参加の同意を求めることを怠る、インフォームドコンセントがなされていなかったことが判明し、損害賠償責任が裁判によって肯定された。
この他にもI県で。
高容量の抗がん剤を投与され死亡した患者がいる。これは、比較臨床試験の被験者に知らないうちにさせられていたことが内部告発によって明らかになり、更には治験の計画書・実施書のデータも捏造されていることが分かった。

治療と研究。
単に患者の治療のためだけでなく、治療以外の目的、そう研究のために、新しい薬やその投与量を試しどのような変化があるか、いわば医療行為の限界を見据えつつ、仮説をたて行う行為、これらを患者に十分に理解させず同じ医療行為として実施されていた事例だ。

あの、病気の腎移植もどうであったろう。
きちんと説明がなされていたろうか。
病気の腎臓を移植して一体いつまで持つのか、その研究ではなかったか…、との見方も出来なくない。

人を対象とする研究の一部が実は省令レベルでの縛りしかなく、しっかりとした法律で守られているわけではない。
人対象研究の医行為を許すべきか否か、許されるなら範囲や条件とは何か、そして、診療とはまるっきり別個の研究についてのインフォームドコンセントについてはどう考えるか、など、日本はその道筋が出来ていないのが実情だ。

被験者・患者の権利をしっかり守って治療と研究を行う法整備が必要であると考える。
そのための勉強会を今精力的にやっていこうと考えているのだ。
ぜひ、皆さんの意見もお聞かせいただきたい。


コラムカレンダー

  • 12

    << December. 2006 >>

    S M T W T F S
    « 11月   1月 »
     12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31  
  • 月別アーカイブ