郡和子のコラム
2006年12月11日(月)
診療と研究
先日、「最善の医療を手に入れる制度つくり勉強会」のことを日記に書いた。
その中で、知らぬうちに臨床試験で人体実験に参加させられている恐れについても言及した。
日記をお読みいただいた方から、そういう事例があればはっきり説明して欲しいとのご連絡をいただいた。
がん治療において、インフォームドコンセントが十分でなく、裁判になった事例がある。
たとえば、A県で。
医師が卵巣がんの患者に対して、薬事法に基づく承認前の治験薬を投与したところ、骨髄機能に重いしょうがいを来たし、血小板の減少、白血球の減少などを起こし死亡した。この件は、治験の被験者として参加の同意を求めることを怠る、インフォームドコンセントがなされていなかったことが判明し、損害賠償責任が裁判によって肯定された。
この他にもI県で。
高容量の抗がん剤を投与され死亡した患者がいる。これは、比較臨床試験の被験者に知らないうちにさせられていたことが内部告発によって明らかになり、更には治験の計画書・実施書のデータも捏造されていることが分かった。
治療と研究。
単に患者の治療のためだけでなく、治療以外の目的、そう研究のために、新しい薬やその投与量を試しどのような変化があるか、いわば医療行為の限界を見据えつつ、仮説をたて行う行為、これらを患者に十分に理解させず同じ医療行為として実施されていた事例だ。
あの、病気の腎移植もどうであったろう。
きちんと説明がなされていたろうか。
病気の腎臓を移植して一体いつまで持つのか、その研究ではなかったか…、との見方も出来なくない。
人を対象とする研究の一部が実は省令レベルでの縛りしかなく、しっかりとした法律で守られているわけではない。
人対象研究の医行為を許すべきか否か、許されるなら範囲や条件とは何か、そして、診療とはまるっきり別個の研究についてのインフォームドコンセントについてはどう考えるか、など、日本はその道筋が出来ていないのが実情だ。
被験者・患者の権利をしっかり守って治療と研究を行う法整備が必要であると考える。
そのための勉強会を今精力的にやっていこうと考えているのだ。
ぜひ、皆さんの意見もお聞かせいただきたい。
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