郡和子のコラム
2007年01月08日(月)
「玉砕」の島を訪ね「玉砕」という言葉を考えた
政府の教育基本法改正案が可決成立してしまい、年明けの会見で、憲法の改正が参院選の争点と、安倍総理が述べた。
そして、明日、防衛庁は防衛省へと変わる…。
日記にもアップしたが、年末年始、玉砕の島を訪ねた。
仙台から夜チャーター便が出るというので、「サイパン」へ。
政治が憲法改正へ動こうとしている時に、もう一度、あの戦争の爪あとを確認しておきたい思いだった。
10年ほど前にも行ったが、今回は、激戦地北部のバンザイクリフ、スーサイドクリフ、ラストコマンドだけでなく、旧日本軍が当初米軍の上陸を想定した南部にも足を伸ばし、3年ほど前にジャングルの中に埋もれていたものを整備したという、旧日本軍の弾薬庫やトーチカ、民間によって作られた慰霊の施設なども観て回った。
改めて書く必要もないかもしれないが、
1944年6月15日、日本の統治領だったサイパン島に米軍が上陸。
島全体が住民を巻き込む戦場となり、陸海軍の約4万7000人のほとんどが戦死した。
中部太平洋方面艦隊司令長官の南雲忠一中将は7月6日自決。
翌7日、北部に追い詰められてサイパン島は玉砕。
そして、東条内閣が総辞職。
サイパンの陥落で、本土がB29の爆撃圏に入ることになり、空襲が激化していく。
テニアン島も陥落、そして、あの原爆を搭載したB29が、日本へ向かった。
日本の統治下にあったサイパンには、約2万人の民間人も在留していたという。その内約1万人が犠牲となったといわれるが、兵士も民間人の犠牲者も正式な数は分かっていない。
このサイパンの玉砕は、その後、民間人を巻き込んだ「玉砕」の「お手本」になっていったのだった。
サイパンをはじめマリアナ諸島は日本の「絶対国防圏」として1943年から防備が強化され、中国大陸にいた部隊などが急遽つぎつぎ派遣されたのだが、この地に渡り命を落としたことを知らない遺族や戦友もいると聞かされた。
案内されたオブシャンビーチのトーチカ周辺では、最近も遺骨が見つかり今後発掘調査が行われる運びだと、65歳になる日本人のガイドが教えてくれた。
「降伏は恥、潔く死を選ぶ」との教育を受けていた日本人の多くは自決を選び、
鬼畜米英につかまるよりはと、民間人も、家族で殺し合い、子供を抱いて「ばんざい」と叫び崖から飛び降りるという悲劇がこの島で起きたのだ。
「玉砕」
玉のように清く気高く砕ける、とは、誰が作った言葉だったのだろう。
そして、「玉砕」をその後も大本営は何度も使用し、褒め称える…。
もう誰にも死ぬことを拒むことは出来なくなった。
無駄に多くの人々を死なせたのは、当時の教育と、そして大本営と軍政府の体制だった。
「玉砕」という飾り付けられた言葉に改めて怒りと悲しさがこみ上げた。
愛国心をもって国のために働ける人間を育てるのが新しい教育の基本理念になる。
そして、軍が強化され、今マスコミは政府に対する批判精神が欠如(いや、つぶされているのかもしれないが)し、更に、憲法改正で「美しい国づくり」とは…。
美しい言葉に飾りつける胡散臭さ、今のこの時代だからこそ、私たちは、しっかりと覚醒して、真実を見極めなくてはならないと思う。
日本刑務所跡に残されたアメリカ軍上陸のサイン JUNE 15/44 とある。
サイパン国際空港近くの旧日本軍弾薬庫跡
バンザイクリフに建つ慰霊塔 多くの観光客も訪れていた
旧日本軍の戦車
野戦重砲兵黒木連隊らの慰霊碑 中国から急遽渡った兵士の名もある
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