郡和子のコラム

2007年08月31日(金)

「先進医療」を例に「先進的な医療」を考える

今の医療制度の中に「先進医療」というものがあります。
しかし、必ずしも先進的な医療のことを指しているのではありません。

ちょっとややこしいのですが…。

2004年の「規制改革推進会議」で「混合診療を全面解禁すべき」との提言があり、2006年の医療制度改革で条件付で一部混合診療を認めることになりました。これを受けて、従来の「高度先進医療」と「治験」の推進策がとられ、その後前者の名称が「先進医療」に変わりました。いわば「混合診療」もどき、とも言えるものです。

保険適応を認めるかどうか検討段階の医療行為を保険診療と同時に同一の医療機関で受けるのであれば、保険適用が認められていない医療行為の部分についてだけ自費診療でどうぞ、というもので、厚生労働省の先進医療専門家会議で審査していて、今年7月現在で117項目について認められています。

保険適用されない医療であっても受けたい患者がいればその道を閉ざさない、ということでもあるといえますが…。
「先進医療」を受けることの出来る医療機関も限られていて、転院が必要であったり、高額医療費の払い戻し対象にもならないため、患者の負担はかなりのものになります。また、残念ながら「先進医療専門家会議」で認められる医療行為は欧米でエビデンス(根拠のある証拠)が積まれ、患者が受けたいと希望するものと必ずしも合致せず、「狭き門」であることも事実です。

このほか、現行制度では、厚労省の届出受理を前提とした「治験」が厚労省未承認の薬物治療との併用を可能にしています。
しかし、治験とよく似た「自主臨床試験」での実験的な医療行為、こちらは「臨床研究に関する倫理指針」はあるものの法的拘束力がなく、殆ど野放し状態で、患者の同意を得ない臨床試験も後を絶ちません。被験者の権利の保障上の大きな問題があるだけでなく、研究者を守ることもできず、また、「混合診療」かくしに繋がる面も否めません。
これら実験的な医療の信頼性を公的な管理体制の中に置くことで、本来の意味での「新しい薬や医療器具や新しい方法による治療や検査など、先進的な医療や実験的な医療」を、迅速に誰もがどこでも安心して、十分な説明を受けて同意した上で、より安価に受けられるようにするということが、日本の医療の将来を考える上で重要だと思っています。

今は、医療格差を含めた大きな課題が、医療制度・医学研究の前に立ちはだかっています。

これら課題を総括的にまとめ医療を推進する法整備が出来ないものか、考えているところです。


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