郡和子のコラム

2009年01月25日(日)

年越し派遣村仙台版に参加して

「今日、ホームレスになった」
本屋さんに積んであった本を手にして読んだのは、昨年秋、今回の派遣切りなどの問題がクローズアップされる前のことでした。
15人の路上生活の人たちから聞きとった人生をまとめたもので、そのいずれの人たちの過去は最初から特別だったものではなく、誰でも起こりうることだということを示していました。
そして、いったん路上生活になると、なかなか一般社会への復帰は困難な状況になることがつづられていました。
深刻な格差社会を作り出した政治の誤りを強く反省させられるものでした。

2002年に成立したホームレス自立支援法によって支援策が打ち出され、緊急の宿泊施設シェルターも、また、その後の就労支援も国と各自治体で取り組まれてはいるのですが、今回の経済・雇用危機で、新たに路上に放り出された(る)人たちへの支援は、残念ながら、おぼつきません。

仙台の状況を見てみると、すでにこれまでも近隣各県から求職のために仙台を訪れ、就職できずに路上生活に至る事例が多くみられていました。
30代未満が19年調査で6.7%、30代が16.7%と、全国の調査よりも若年層が多いことが分かっていました。
加えて、その3割は路上生活期間が6カ月未満でした。

つい先日、仙台で、厚生労働省の委託事業として、市民団体が実数調査を行なっています。
その数はまだ公表できないとのことですが、これまでより3割ほど増えていたそうです。
このほか、車上での生活者、また、ネットカフェ、漫画喫茶などを宿所代りにしている人がどの程度に増えているのか、きちんと見ていく必要があります。
また、仙台市以外の路上生活者も確認されていて、さらに支援体制を拡充しなければいけない状況です。

昨日、仙台の五橋公園で、市民団体の炊き出しに合わせ相談テントが設営されました。
さながら「年越し派遣村・仙台版」のような体制。

市民団体が温かい食事、衣類や毛布、生活用品などを提供し、弁護士らが住居の相談、生活資金相談、就業相談などを行い、私もボランティアの仲間入りをさせてもらいました。

日記にも書きましたが、参加者はいつもより何らかの事情があったのだろう少ない、とは、定期的に炊き出しを行っている団体の今井誠二理事長、それでも、新顔が多く、67人が温かいカレーライスを、うれしそうに、あるいは申し訳なさそうに食べました。

相談テントには16人が入り、宿所の相談、生活保護申請の相談をしたということです。

今日25日の朝日新聞の一面には「生活保護申請3割増」の見出しが躍っています。
先月の申請が昨年と比べ浜松では2倍を超え、各地で増加、自治体も補正予算を組んで対応に当たるとのこと。

派遣切りに関して言えば、3年の期限を迎える今年3月までで打ち切られるいわゆる2009年問題もあわさり、厚労省が発表している8万5000人より多くの派遣労働者が仕事を失うものと考えられます。
(厚労省は09年問題と合わせて8万5000人と話していますが、そんなものではない、甘いと思っています。)
何しろ派遣労働者のうち1006万人は雇用保険にも入っていません。
政府は新たに雇用保険加入者をこれまでの一年の雇用見込みから半年以上の雇用見込みに拡充する方針ですが、その対象はわずか148万人です。
これで安心のセーフティネットと言えるわけがない。
つまり、生活保護の申請は今後もさらに増えざるを得ない状況で、これでは、無年金の高齢者増加を含め生活保護予算が財政に重くのしかかってくるでしょう。

派遣法の見直しも雇用保険法の見直しも緊急の対策としても重要ですが、生活困窮・貧困の根っこを絶つ複眼的な対策が欠かせないと思っています。

教育を含め「あまねく人への惜しまぬ投資」が、ひいてはこの国の財政立て直しのカギであることを再確認しています。

それにしても、あの、2兆395億1300万円の予算があれば、いくつかでも対策が打てるのに…。


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