郡和子のコラム
2009年07月02日(木)
「差別と日本人」の読後感想を含めて
「差別と日本人」
角川書店からこの6月に出版された辛淑玉さんと野中広務さんの対談を柱にした本のタイトルです。
部落差別の歴史や在日の人々の差別、戦後処理の問題、様々な出来事の背景にあった差別問題がつぶさに示されこの本を通して、なぜこの国にいまだ差別がなくならないのか、あらためて考えさせられています。
政治家・野中広務氏と、論説者・辛淑玉氏が、それぞれご自身の出自による差別の実態を赤裸々に語り、日本の人権意識を問うています。
辛さんのまえがきにこんな一文がありました。
「差別は、いわば暗黙の快楽なのだ。~不平等な社会では差別が横行する。そして、あたかも問題があるのは差別される側であるかのように人々の意識に根付き、蓄積されていく。時の権力は、権力に不満が集まらないようにするためには、ただ、差別を放置するだけでいい。そうすれば、いつまでも分断されたシモジモ同士の争いが続く。」
ところで、今日本のトップリーダーである麻生総理が、2003年「創氏改名は朝鮮人が望んだ」と発言したことが問題になったことを覚えているでしょうか。
日本人はすぐ忘れるというか、差別を差別と認識しないというか…。
もう、ずーっと前、私が小学校6年生の時だったでしょうか。
同じクラスで仲が良かったお友達が転校することになりました。
彼女はお別れのあいさつで「私の本当の名前は○○ではありません」と、突然、朝鮮の本名を名乗りました。驚きました。
が、のちになって、彼女がどんな思いだったかを想像し、胸が痛みました。
創氏改名は日本の植民地支配の結果もたらされたもので、いまだに、在日の皆さんの間では、日本で生きていくための呪縛のようなものになっていると、そう思います。生きにくさが少しでも楽になるように。
麻生さんの発言は、許しがたいものでした。
しかも、歴史認識を誤っていて、世界に恥ずかしいと思いました。
これだけではありません。
先日、第2次大戦中、麻生財閥の企業の一つ、麻生炭鉱で強制労働をさせられた連合軍捕虜の当事者・家族が謝罪を求め来日し、国会内でお話を聞かせていただきました。
実はこれまで、日本政府、麻生総理は、捕虜の強制労働は事実でないと強弁して来ました。
しかし、厚生労働省の倉庫からその事実を示す資料が出てきたのでした。
そのことが元捕虜たちの来日につながったのですが、麻生総理は彼らと面会することもなく、ましてや謝罪することもありませんでした。
麻生炭鉱では、強制連行してきた朝鮮人も強制労働させ、消耗品の労働力として命を紙屑のように扱い、その数は一万人を超えるとされています。
賠償はいまだなく、遺骨さえ戻っていない人たちも大勢います。
また、上述の辛さんと野中広務さんの対談の中では、麻生さんが「野中やAやBは部落の人間だ。だからあんなのが総理になってどうするんだい」と、党内の会合で発言したことについても詳しく書かれています。
野中さんは「何の疑問もなしにそう言うんだ。不幸な人だ。」そう、辛さんに話しています。
麻生さんの言葉や差別意識が日本で許容されているのはなぜでしょうか?
辛さんのあとがきに「DAIGOのように、野中氏のお孫さんがテレビで祖父の名前を七光として活用できる社会は、残念ながらまだきていない。」とありました。
差別を造り出す、差別に無頓着になっている、弱い人たちや虐げられている人たちへの鈍感さは、やはり政治の責任だと思います。
政治家こそ、差別に敏感であらねばならない、また、政治こそ、その差別に対応しなければならない、そんなことを強く感じさせられる本でした。
私が国会の中で、このところ強く思うのは、理屈や理性というよりも感情で、しかも、声の大きなところへ迎合するように行動する政治家が多いのではないかということです。とても危険なことと思います。
声を出せずにいる人々への目線、日常化している差別を表面化する作業を避けない姿勢、これを持ち続ける政治でなければ、日本は良くならないでしょう。
そして、改めて言うまでもなく、麻生さんをトップにおいていては日本の人権意識は上がりません。
一日も早く退陣願いたい。
7月3日、衆議院を通過する予定の水俣病の新しい救済法案も、家族を含めた差別を避けるために認定を受けずにきた被害者の皆さんに届けたいと思いますが、本来であれば、解散前に忙しくではなく、選挙後、じっくりと議論したかった、すこし、残念であることを、添えさせていただきたいと思います。
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