郡和子のコラム

2010年03月21日(日)

こども手当・高校授業料実質無料化

政権交代後初めて厚生労働省が公表した日本のこどもの相対的貧困率は14,2%。
しかも、重要なのは、OECDの各国の中で、日本だけが所得の再分配後、つまり、政府が介入した後に貧困率が高くなるという、世界で類を見ない状況になっている。
今回、法案審議の中で、私が総理に指摘したことです。

このことは何を意味しているでしょうか。

子供の貧困率は、100年に一度の経済不況だとか、社会経済状況に影響を受けるというという側面よりも、実は、政治の貧困の結果として政策的に放置されあるいは増幅された貧困だといっても過言ではない、つまり、この国の「人生前半の社会保障」の“貧困”を端的に表しているのです。

私は、今回のこども手当や高校授業料実質無料化が、こうしたこれまでの社会保障の偏りをただし、国として「人生前半への社会保障の充実・強化」を行うという強いメッセージが込められていると総理の考えを伺いました。

1971年の児童手当の法制化にあたって、当時の与党の政治判断は、所得制限を設け、事業主負担割合は縮減、支給対象児童は第3子からに制限された脆弱な制度として産み落とされました。
その背景には、企業による家族手当の増大傾向や、年功的賃金制度を理由とした財務当局や財界からの反対論があり、一方、労働界からは、児童手当の拡充による主たる生計者の男性の基本賃金の抑制に繋がるのではないかと強い懸念があったからでした。
この児童手当法の成立経過に示されているように、「こどもの育ち」に対する経済的支援は、日本型年功賃金制度、家族手当を含む生活給制度と表裏一体の関係、相互補完の関係として位置づけられたわけです。

これまでの男性正社員の日本型年功賃金制度が担ってきた、子育て費用や教育費、住宅費、その他の生活保障機能について、どのように社会政策的な資源の再配分で賄えばいいのでしょうか。
もはや、この日本型年功賃金制度の中に組み込まれる人々は限られているのですから。

究極的には、同一価値労働・同一賃金原則に基づく賃金制度を確立して、正規非正規、男女の均等待遇を実現する労働政策を実現するのか否か。
また、セーフティネットに裏打ちされワーク・ライフ・バランスのとれた多様な働き方、生き方を選択できる社会を作るか否か。
つまり、こどもの育ちを社会で応援しようというだけでない、働き方や生き方に関わる「この国のかたち」を提起するものであると考えています。

今後も、しっかり議論してまいります。皆さんのご意見もお聞かせください。


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