郡和子のコラム
2013年04月20日(土)
この矛盾をどう考えるか
安倍総理の「三本目の矢」について、日本記者クラブで講演がありました。
その中で、女性の活躍は成長戦略の中核をなすものだと総理は話され、大変心強く思いました。
女性の力が日本の力になる、私自身もそう考えています。
労働人口のグラフで、『M字カーブ』と称されますが、結婚や出産・子育て期に仕事を中断することによって30歳代の女性の就労人口が落ち込む現象です。
これは日本特有の現象で、その落ち込みをなだらかにすることが、女性がいきいき生きるだけでなく、経済にも大きなプラスになる、これからの日本の少子高齢化を考えれば、M字解消が重要な政策だと思って、長年の自民党政権下では出来なかったこども子育て政策への重点化政策に民主党は舵を切ったのでした。
女性たちがしっかりとした所得を得てどんどん税金を納め、3号被保険者から脱し年金保険料を収める立場にしていくことは、少子高齢社会の大きな経済対策でもあると思っています。
ところで、安倍総理は、『子供が3歳になるまでは男女がともに子育てに専念し職場復帰できるように、経済三団体に「3年育休」の推進をお願いした。積極的に認める企業には助成金をつくるなど応援したい。』と話されてもいました。
伝統的家族観を持つ安倍総理の意向は、当初「3年間育児に専念するのは女性」とされたそうですが、さすがにそれには修正が加えられ、「男女が共に」となったそうです。
2020年までに指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度とする―。民主党政権下で閣議決定した第3次男女共同参画基本計画で、この数値目標をあらためて強調し対応に当たってきました。
が、日本の男女平等度は134カ国中101位、先進国の中では最低水準です。
法や制度が整っても「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分業を是とする価値観から発した格差はなかなか解消されません。
一方、「イクメン」の言葉で男性の育休取得者を増やし、2020年までに13%と目標値を決めたのも民主党政権でした。
こちらは11年度過去最高の2・63%になり、改正育児・介護休業法が施行された前年度(1・38%)からほぼ倍増しましたが、目標にはまだ遠い状況です。
女性たちも、育児休業を取っても実は取得期間は短縮傾向にあって、3歳までの育休制度がある企業でも、子どもが1歳を迎えたところで復帰する人が大半だそうです。
長い期間職場を離れることで休業前の職場復帰が難しくなると、女性自身が感じているからにほかなりません。
安倍総理は「3年育休」の推進で積極的に認める企業に助成金をつくるなどしたいとのことですが、どれだけの効果があるか。それ以前に環境整備を行うことが求められるのではないでしょうか。
父親と分担して育児休業をとる、そのためには休業中の給付金を今の水準から引き上げ休業中の生活を保障する。
またきめ細かい保育環境を作る、前述もしましたが社会保険制度や税制、配偶者控除制度等の根本的な見直しなど、手を入れなければならない課題はたくさんあります。
一方、「女性を活用する」とお話になりながら、自民党の憲法草案では、人権保障とは異質な「家族」規定が見て取れ、かつての「家制度」を彷彿とさせるのを私は心配せずにはいられません。その矛盾を、総理自身どうお考えなのでしょうか。
今、値上げラッシュで、生活は、アベノミクスでの高揚気分とは裏腹、厳しさを増しています。
非正規・不安定雇用・低賃金は安倍さんの目指す雇用のさらなる流動化で果たして良くなるのでしょうか?
所得を上げてもらおうと号令をかける一方で、年金を切り下げ、最低ラインの生活保護基準さえもこれまでにない幅であっさり切り下げる。
この矛盾にも、総理自身はどうお考えなのか、ちっとも答えていただいていないことを、ここで改めて指摘します。
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