郡和子のコラム

2013年06月16日(日)

高額消費が増えた?実感は伴いませんが

アベノミクス効果で高額消費が増え始めたそうです。

6月14日の産経新聞は《「間違いなく“打率”が上がった」。高級腕時計「ロレックス」の売り場を今月7日に2.4倍に拡充したそごう千葉店(千葉市)の担当者は半年間で購買客が増えた様子を野球にたとえてこう表現した。》と、報じています。
高級腕時計だけではないそうで、車や宝飾品も好調。
富裕層だけでなく、中間層や低所得層の消費心理が改善したためだ、とも報じています。

しかし、私の周りは、財布のひもが緩んで少し大きい買い物をしようという気持ちになったという感覚はありません。

物価上昇率2%の目標につられ、値上がりするかもしれないからと高額商品の買い急ぎが始まっているのかもしれませんが、
買い急ぎたくても、お財布の中に入るものがなければ、当然ですが、買うことはできません。
買い急げる人と、そうでない人との差が、広がってきているのでしょう。

確かに資産バブルが起こり始めています。
その一部を消費に充てる「資産効果」ではなく、賃金の上昇をはかり、家計を本格的に回復させることがなければ、私たちの消費マインドは緩みません。

安倍総理が、「私たちは10年間で平均年収を150万円増やします」と8日の都内での演説で話しました。
政府が12日に取りまとめた成長戦略は、1人当たりの国民総所得(GNI)を10年後までに150万円以上増やすことを数値目標としています。
1人あたりの国民総所得(GNI)と年収とは異なるもので、安倍総理はそのことをご存じなかったのか、あるいは、わざと国民に錯覚をさせることを目論んだのか、いずれにしても、偽りの演説でした。
1人あたりGNIには企業のもうけ分が含まれていますから、家庭の年収とは別物、企業がもうけをため込めばお給料は上がりません。

総理の賃上げ要請もあるので経営側もそれなりに対応しようとするでしょうが、その一方では、雇用の弾力化を強く求めています。
解雇規制の緩和、労働時間規制の緩和、派遣制度の緩和、などです。

企業は非正規雇用への依存度を高めたり、首切りをしやすくしたりするなど、労働条件を操作することでたとえ賃金単価を上げたとしても、総人件費は上げないつもり、と、考えたほうがよさそうです。
円安の影響で輸入コストも上がっています。それらの負担を十分に価格に転嫁できないのであれば、グローバル競争の中で勝ち残っていくために、人件費にしわ寄せして総コストを抑えなければならなりません。
また、年越し派遣村の再来も危惧されます。
いえ、それよりももっと厳しい、賃金が増えないまま物価だけが上がる、貧困の拡大という、状況に陥りかねません。

格差の拡大、貧困の広がりは、かえって経済の成長を阻害します。
大きな危機感をもってアベノミクスの「まやかし」について、論じていきたいのですが、残念ながら、安倍総理は、約束していた衆議院の予算委員会の集中審議にも応じることなく、国会議員の定数削減問題からも逃げ切り、国会を閉じるおつもりのようです。

私たちは、働く人たちが安心できるように労働法制を充実してきました。
人への投資を行い、分配機能を強化させることを最優先にしてきたのです。
人口減少社会を迎え、かつての高度経済成長期のようなイケイケどんどんの成長は望めないのですから。


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