郡和子のコラム

2013年10月10日(木)

安保理決議1325号を真に生かす

先の国連総会の基調演説で、安倍総理は、紛争地域での女性に対する性犯罪を防ぎ、女性の人権のため努力するとして、政府開発援助(ODA)の拡大を表明しその額は30億ドルを超えると表明しました。女性の人権について話された演説の細かい内容を確認するため、早速その原稿を役所から取り寄せ、じっくりと読ませてもらいました。

国際社会を主導する一員となるための日本としての貢献が4点。
1、UNウィメンの活動を尊重し有力貢献国として誇りある存在になる。
2、女性・平和・安全保障に関する「行動計画」を草の根で働く人々と協力し作成する。
3、紛争下の性的暴力の防止、被害者の物心両面での支援。
4、自然災害で女性に配慮する決議を次回国連婦人の地位委員会に再度提出する。とありました。なかなか心強い内容だったと思います。

しかし、この演説は、日本軍による慰安婦の問題に全く触れずに女性の人権とは・・・と批判され、今月11日~16日に女性の地位向上をテーマに開かれる国連会議で、改めて日本政府に対して慰安婦問題の法的責任を認めるよう決議が出される見通しです。また、1000兆円を超える莫大な国家債務を抱える日本が沈没しないようにと国際社会が注視している中、大盤振る舞いのバラマキを約束したと、残念ながら、総理の演説に対し会場から賞賛の(お付き合いでも)拍手は全く起こらなかったといいます。

ところで皆さんは国連安保理決議1325号をご存知でしょうか?総理の今回紹介した演説の2つ目に「行動計画」とあるのは、この1325号決議に定められた国別の行動計画のことです。2000年10月末に安保理で採択されました。ご存知の方はあまりいらっしゃらないと思います。

「武力紛争に関わるあらゆる関係者に、ジェンダーに基づく暴力、特にレイプその他の形態の性的虐待、また武力紛争下におけるその他のあらゆる形態の暴力から、女性や少女を保護する特別な方策をとることを求める。
すべての国家は、ジェノサイド、人道に対する罪、女性・少女に対する性暴力を含む戦争犯罪の責任者への不処罰を断ち切り、訴追する責任があることを強調する。またこれらの犯罪を恩赦規定から除外する必要性を強調する。」など18の項目で、男女平等と平和・安全保障との本質的な関係に焦点をあてた決議と言われています。

そして、何より重要なのは、国内・地域・国際組織および機関のあらゆる意思決定レベルにおいて女性の参画を促していることです。

加盟国全てに拘束力を持っており、これまで42カ国が国別行動計画を策定しました。しかし日本はまだ策定しておらず、安倍総理は今年中に草の根で働く人々との協力により取りまとめると表明したわけです。

しかしこの流れは安倍政権になって力が入ったわけではなくて、実は、民主党政権下でも準備を進めてきたものです。

2010年秋には、当時の政務官がこの決議に基づき日本の取り組みを伝える演説をニューヨークで行っています。

ご紹介すれば、PKOや平和構築の分野で女性の視点を活かす取り組みとして、たとえば、アフリカで行われたPKO要員の研修に女性自衛官を派遣したこと、将来の国軍要員となることを期待される東ティモール人女性を防衛大学校で受け入れていること、また、コンゴ共和国では、平和構築のための警察民主化支援の一環として、多数の女性警察官の研修を実施していること。平和構築人材育成事業で55人の女性を専門家として育て現場で活躍していることなど。

何を申し上げたいかというと、政権交代、私たちの政権があって、今の政権が取り組んでいる、やらねばならないことは引き継がれ取り組まれているということです。下準備をし進めてきたことでいよいよ結実に向けてのステージになっていて、それが安倍さんのもとへ転がり込んでいるのが少なくなく、忸怩たる思いです。

しかも、私たちの政権だったら、しっかり押さえるはずの、例えばこの件でいえば、過去の問題について安倍総理の演説にはなかった事を言及もできたであろうと、残念に思ったのでした。

さて、最後に前向きに。女性が戦争や紛争の犠牲者だというだけでなく、女性だからこその視点を紛争解決、そして復興に生かすことが、これからの国際平和に大きな力になると、私自身も信じます。

国連決議1325号を真に生かす行動計画づくりに協力し、よりよいものにするために発言して行きたいと思います。


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