郡和子のコラム
2013年12月08日(日)
一強独裁政治に、民主主義を取り戻す戦いが始まる
国民の皆さんが注視する中、特定秘密保護法案が可決成立してしまいました。
数の力で押し切った政府与党の手法は、民主主義を圧殺するものです。
自分たちに不都合な議論を封じ、国民の声を顧みず、国会は数を頼んで踏みつぶせ、という強権政治があらわになったものと強く抗議いたします。
そもそも、総理の所信表明演説には、「特定秘密保護法案」の「秘」の字も出てこず、この臨時国会は、当初から、アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」を議論する国会であったはず、でした。
国には、防衛上あるいは外交上、一定の秘匿される事案がありますが、それにしても、安倍政権が成立を急いだこの法案は、残念ながら多くの欠陥をもつものでした。
だからこそ、私たちは、「情報公開法改正」と合わせ、「公文書管理法改正案」「特別安全保障秘密適正管理法案」「情報適正管理委員会設置法案」「国会法改正案」の4法案を衆議院に提出し、議論をすべきと迫りました。
日本新聞協会も6日、特定秘密保護法の成立を受けて、次のような考えを公表しています。
それは、『日本新聞協会は10月2日付意見書で、特定秘密保護法案に対し(1)政府・行政機関にとって不都合な情報が恣意的に指定されたり、国民に必要な情報まで秘匿したりする手段に使われかねない(2)厳罰化が公務員らの情報公開に対する姿勢を過度に萎縮させ、社会の存立に不可欠な情報の流通まで阻害される(3)報道機関の正当な取材が運用次第では漏洩の「教唆」「そそのかし」と判断され罪に問われかねない』などの懸念を指摘したうえで、『政府や行政機関の運用次第で憲法が保障する取材・報道の自由が制約されかねず、結果として民主主義の根幹である「国民の知る権利」が損なわれる恐れがある』とし、『この考えにはいささかの変わりもなく、今後も「国民の知る権利」、取材・報道の自由が阻害されないよう強く求めていく』というものです。
この間の国会での審議の中でも、危惧は深まるばかりでした。
宗教者、ノーベル賞を受賞された益川敏英氏はじめ学者の方々、吉永小百合さんはじめ映画界、芸術界、音楽界、日弁連などなど、法案成立を受けても、抗議の声が続いています。
「特定秘密」を取り扱う人のプライバシーを調査し管理する「適性評価制度」というものが法律の中に規定されています。調査項目は、渡航歴や、ローンなどの返済状況、精神疾患などの通院歴、飲酒の量等々。秘密を取り扱う人とは、国家公務員だけではありません、一部地方公務員、政府と契約関係にある民間事業者、大学等で働く人も含まれます。その上、本人の家族や同居人にも調査が及び、広い範囲の人の個人情報が政府によって収集・管理される疑念は晴れませんでした。
「特定秘密」を漏えいする行為だけでなく、それを知ろうとする行為も処罰の対象です。記者、著述業、研究者の自由な取材を阻害するだけでなく、正当な内部告発も萎縮してできなくなるでしょう。
例えば、ある日、カメラで写したものの中に特定秘密が含まれるとして、知らぬ間に、あなたが犯罪者になってしまうこともあるかもしれません。
自民党の石破幹事長が自身のブログで反対デモでの「絶叫はテロと変わらない」と言及されたとのことは、表現の自由も奪うということです。
加えて、国会には国政調査権が与えられていますが、意図的でなくても「特定秘密」を「漏えい」させてしまえば「懲役刑」に問われます。しかも、何が「特定秘密」にあたるのかも「秘密」です。官僚たちもこれでは委縮し、私たち国会議員に対しての情報提供も著しく減少してしまいかねません。法案に「知る権利」を明記したとしても、情報を提供する側に「自主規制」が働くのは明らかで、これでは、立法作業もままならなくなる事態が生じかねないのに、なぜ、賛成できるでしょうか。
国会での審議は、衆議院でわずか46時間、参議院に至ってはその半分の23時間。
あの郵政民営化法案は、衆議院で120時間、参議院で93時間の質疑でした。
郵政法案よりも、一人一人に影響を与えることになる法案であるにもかかわらず、です。
国民の声を真摯に聞くべき公聴会についても、衆参とも中央公聴会は開催されませんでした。
衆議院での地方公聴会が福島で開かれ、全参考人が反対ないし慎重審議と述べたにもかかわらず、その翌日には、そんなことはお構いなしの強行採決でした。
参議院の地 方公聴会は、前日委員長が職権で決めるという乱暴ぶり。
「これ以上、法案の問題点が明らかになっては困る」「これ以上、国民の反対の声が高まるとまずい」という恐れと「衆参ともに多数になっ たのだからとにかく数で押し切れ」という巨大与党の驕りの表れだと思います。これが安倍総理の言っている、決められる政治、なのでしょうか。
国際標準として70か国以上の500人を超える専門家らが長年協議し起草され今年6月の発表された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(ツワネ原則)を無視した政府のこの法案は、国際社会からも厳しい目で見られています。そのことも重く受け止めるべきだと、私もこの間訴えてきました。
国会審議と国民の声を軽視し、国際社会からも懸念の声が上がる中、民主主義のプ ロセスを無視した安倍総理の姿勢は、絶対に許さない。
これが選挙の結果です。一強独裁が始まってしまいました。
今一度政権を取り戻して、この法律を廃案にしなくてはいけない、民主主義を取り戻さなくてはならない、そう強く思います。
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