郡和子のコラム

2014年01月18日(土)

同盟強化の言葉が虚しい

安倍総理の側近中の側近である萩生田光一衆議院議員が、アメリカ政府が安倍総理の靖国参拝で「失望した」のは「民主党政権、オバマ大統領だから言っている。共和党政権時にこんな揚げ足取りはしたことがない」と語った、との記事が、今日18日の日経新聞に掲載されていました。

 

他国の政党への批判、しかも同盟を強化しようというアメリカの政権に対する侮辱的な発言です。さらに日米関係が悪化するのではないかと危惧します。

 

 

1月8日のWEDGEに、ワシントンから辰巳由紀さん(スティムソン・センター主任研究員)が「靖国参拝を米国が許容できない理由」と題し、総理の靖国参拝はアメリカで大問題として認識されていて、安倍総理を見る目は格段に厳しくなっていることを寄稿していました。

一部を紹介します。

『日本の総理が靖国神社に参拝することで、中国や韓国に「日本の軍国主義化」について大騒ぎをする絶好の口実を与えることになり、日本にはこれからアジア太平洋地域で安定した安全保障環境を作り出すために一層、安全保障分野での役割を拡大してもらいたいと考える米国にとっては非常に具合が悪い。』

『「大局的判断よりも自分の思い入れにこだわる指導者を米国は信頼できるのか? そのような人物がけん引する日本という国との関係を強化することで、米国がリスクを抱え込んでしまう可能性はないのか?」というわけで、米国の東アジアにおける立ち位置を考慮したうえでの「日本リスク論」が首をもたげているのである。』

というものでした。

民主党であれ共和党であれ、そのように見ているということです。

「アーリントン国立墓地だって南北戦争時の南軍の兵士が埋葬されていても大統領が献花したりするのだから、靖国神社に総理が参拝して何が問題なのだ」という論調があることに対しては、アメリカ人には全く受け入れられない「例え」なのだそうで、昨年10月、日米安全保障協議会(2プラス2)会合のために来日したヘーゲル国防長官とケリー国務長官が揃って千鳥ヶ淵に献花に赴いたのも、「戦争の犠牲者に追悼の意をささげるのであれば、こちらの施設があるではないか」という明確なメッセージだったとしています。

 

 

どんなに安倍総理が精力的に多くの国々を訪問していると胸を張っても、最も気を使わなければならない近隣国を逆なでし同盟国であるアメリカとの関係も悪化させた上に、今度の総理側近の発言です。増々関係がぎくしゃくしてくるでしょう。情けなく思います。

 

 

ところで、1976年に「第2次世界大戦への記録が、人々の念頭から薄れようとしている」として書かれた本を、このお正月に読みました。

著者は、当時京都大学助教授ドイツ現代史専門だった、京大名誉教授で政治学者・歴史学者の野田宜雄氏。本のタイトルは「ヒトラーの時代」です。

戦後69年が経過し、実体験として戦争を知る人々は多くが世を去ってしまいました。あの戦争から時間的距離が開くにつれ、その歴史をどう学んだかで戦争を知らない今を生きる人々のとらえ方は違ってきます。

「ヒトラーの時代」は、ドイツでヒトラー政権が成立した1933年から第2次世界大戦が終わった1945年までのおよそ12年間の歴史を綴ったものです。

ヒトラーの生い立ちから政権につくまで、ヨーロッパを中心にナチス・ドイツが国際政治に引き起こしていく波紋、第2次世界大戦に先立つ2年間のアメリカや極東など世界の主な国々の国内情勢が絡み合って負の方向へ相互作用を繰り返し進んでいく外交、そしてあの大戦へ。

 

独裁者の非人間的悪魔的な行動ばかりでなく、うつくしいスローガンの陰の冷徹な権力、政治のグロテスクとでもいうか…、今、まさに、今だからでしょうか、とても興味深く読みました。皆さんにも読んでいただきたい一冊です。

 

 

さて、「積極的平和主義」を好んでお使いになる安倍総理。集団的自衛権の行使に前のめりの姿勢はさらに拍車がかかっているようです。集団的自衛権行使は日米同盟の強化のために何としても必要だと。

しかし、何故アメリカが総理の靖国参拝について深い配慮があってしかるべきだろうと強い不快感を示す「失望」を伝えてきたのか…。

アメリカは、今、中国の軍事的覇権に睨みを利かしながら中国との経済関係を強力に進めていく基本戦略をとっています。このことは何を意味するのか、日本はもっと深く考えるべきだと思っています。

 

 

この政権の暴走を阻止するためにも、野党民主党がしっかりしなくてはなりません。通常国会を前に決意を新たにしています。


2014年01月01日(水)

2014年 新春にあたり                  子どもを産み育てやすい社会で日本の未来を拓く

あの東日本大震災から間もなく3年を迎えます。被災地は少しずつ復興地へと変貌しつつありますが、まだまだいくつもの困難な道のりが続きます。被災された方々の思いに寄り添いつつ、自慢できる新しいふるさとの創生に、政務官時代の経験とネットワークを活かして取り組むことをまずお誓い致します。

 

さて、衆参の選挙を経て巨大化した与党を前に、健全な野党の役割を果たす態勢を整えることができず、正直、力不足を痛感して悔しい思いの国会でした。しかし、一方で、この政権の致命的な弱点を確認も致しました。つまり、安倍総理が目指す国の形は、国家が国民保護の名の下に、度を超えて個人の自由・権利を制限するいわゆる「家父長主義(パターナリズム)」の国であることが露わになり、国民の皆さまがこの安倍流保守政治の本質を敏感に感じ取って、厳しい視線を注ぎ始めたと思うからです。

 

私は、この国の根源的な問題は、人口減少社会に対応できていないということだと思っています。日本の総人口は今後50年で4000万人以上減少し、2040年以降は毎年100万人以上の規模で人口が減ると見込まれているのに、未来に起こるであろう事態を想像し備える政策は長年放置されてきました。アベノミクスで経済成長をというのは今一時の幻想でしかありません。

出生率を2030年までに2,1に回復できれば超長期的には総人口1億人程度を維持でき、かつ65歳以上の人口比率は将来的にも26,7%で安定させることが可能です。つまり、経済・社会政策の最も大きな柱は、子どもを産み育てやすい社会を作ること。勿論、子どもを持つかどうかは個人が判断すべきことですが、産みたいけれど産めないのは、出産や育児を支える公的な支援が不十分だと考えるべきです。

女性の労働参加が多く、なおかつ出生率が高い先進国は、就業と育児の両立支援の充実が、出生率の向上に好ましい成果をもたらしていると考えられます。

残念ながら今の政権は、子育て介護は家族の責任というのが基本方針で、そればかりでなく、あろうことか、これまで以上に不安定雇用を増やす計画です。不安や不満の矛先を偏狭なナショナリズムや社会的弱者に対する反感へと誘導しながら。

 

国政に送っていただき9年目、改めて、周辺諸国と真摯な対話と協調による地域の平和と繁栄を求め、貧富の格差が少なく、自立した個人が絆を紡いで共に生きる社会を目指して、初心を忘れず諦めず努力を続けて参ります。すべては未来の子供たちのため。

変わらぬご指導とご鞭撻をお願い申し上げます。


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