郡和子のコラム
2014年03月22日(土)
~国民的議論を進めよう~ 集団的自衛権
26年度予算が3月20日成立しました。戦後3番目に早い成立だったそうです。数で圧倒的な力を持つ政権の予算委員会での答弁は、議論の本質を避けた誠意のないものが目立ちました。これからの後半国会、どう巨大与党に戦いを挑むのか、私たち野党、とりわけ我が党の胆力が試されます。戦って参ります。
さて、安倍総理はオランダのハーグで開かれる核安全保障サミットに出席するため間もなく出発します。冷え切った隣国との会談も予定に組み込まれました。会談がどのように運ぶか注目です。また、サミット開会前にはアムステルダムの「アンネ・フランクの家」の訪問を急きょ決められたようです。「アンネの日記」破損事件で遺憾の意を伝え「歴史の事実を謙虚に受け止め、世界の平和と安定に貢献する姿勢」を訴える見通しとのこと。オランダでも戦時性暴力の犠牲者がおられますが、総理はオランダのルッテ首相とどんな話をされるでしょう。これも注目致します。
ところで、サミット出発前の今日、3月22日、総理は防衛大学校卒業式で訓示を行い、集団的自衛権の憲法解釈変更に強い意欲を示していました。
「日本近海の公海上において、ミサイル防衛のため警戒にあたる米国のイージス艦が攻撃を受けるかもしれない。そのときに日本は何もできないということで本当に良いのか。必要なことは現実に即した具体的な行動論と、そのための法的基盤の整備」、「現実を踏まえた安全保障政策の立て直しを進めていく」と集団的自衛権行使を可能にする必要性を改めて強調したのです。
国会での議論では、「(憲法解釈は)私が最高責任者だ」と驚くべき発言をし、それが問題として取り上げられると、その後「政治の場で私が決めればいいということではない。安保法制懇で議論をしている」と発言が変わり、連立を組む公明党に配慮したのでしょう、予算成立後のNHKが中継放送した記者会見では、「与党と対応を検討した後に閣議決定し、国会で議論をいただきたい」と、比較的慎重な発言をしていましたが、その舌の根も乾かぬうち、今日は一転、また強気の発言です。
安倍総理が例に挙げた米国艦船への攻撃という設定ですが、防衛省内では「日本に対する攻撃が始まったと考えれば、今も行使が認められている自衛権の範囲で対応できる」と、なんでこの例示なのかとかねてから疑問の声があり、海上自衛隊幹部も「イージス艦には通常、防御艦艇をつける。米軍が自分で守れない状況は考えにくい」と言う、つまり、省内では「集団的自衛権が行使できないと困るような差し迫った具体的な課題はない」との見方が大勢を占めている。にも関わらず、の発言です。
小泉政権、第一次安倍政権、福田政権、麻生政権の4代にわたり、首相官邸で内閣官房副長官補(安全保障担当)を務めた、国際地政学研究所理事長の柳澤協二さんは、『安倍総理はそもそも「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げている。日米安全保障条約に基づいて、米国は日本を一緒に守る義務があるが、日本には米国が攻撃されても守る義務がない。集団的自衛権を使えるようにして、戦勝国・米国と対等な国になりたいというのが、首相の真意ではないか』と、院内での勉強会で安倍さんを分析しました。
戦後レジームからの脱却というのは、東京裁判判決で責任を負った米国を否定し憲法制定でも貢献した米国を否定する、つまりこの間の日米関係の根底を政治問題化して揺るがすことに繋がってしまいます。
米国の有力シンクタンクCSISパシフィック・フォーラム事務局長を務め、日米関係のスペシャリストであるブラッド・グロサーマン氏は東洋経済の1月28日付のインタビュー記事で次のように述べています。
『米国にとって、安倍首相のスタンスは東アジアにおける外交政策を混乱させる。米国が選好する政策課題とは違うものを安倍首相は打ち出しているからだ。こうした外交政策上の混乱は、結果的に、尖閣諸島や防空識別圏(ADIZ)など中国との紛争について、日米両国でどう取り組むかという戦術的な違いをいたずらに大げさにしたり、悪化させたりする危険性につながる。』
安倍さんが集団的自衛権行使は日米同盟強化の政策だと説明しても、そのスタンスとの矛盾を指摘していて、私もそのように思います。
安倍政権がこのまま国民的議論をなしに集団的自衛権行使に向け解釈変更することを許しちゃならない、民主党はそのために国会でどう戦うべきか、何が必要か、と、政策を研究する高齢者のグループの皆さんが、昨日、私の仙台事務所に心配して集まってくださいました。3時間半にわたる熱い議論、意見交換になりました。戦争体験者もおられ、勉強になりまた励まされました。
集団的自衛権の行使容認は、「海外で武力行使をしない」という戦後積み上げてきた大きな方針を変えて、日本の国のかたちそのものを変えてしまうものです。
国民の方々に広く集団的自衛権について理解をいただき、その是非を考えていただきたいと思います。
2014年03月08日(土)
国際女性デーによせて
しょうがいをもつ人たちのスポーツ最大の祭典「パラリンピック」が、今日8日未明ソチで開幕しました。5つの競技72種目で熱戦が繰り広げられます。選手たちはみな人間が持っている可能性のすごさを存分に見せてくれることでしょう。震えるような感動の一週間になると期待をしています。
さて、パラリンピックも始まった今日、3月8日は、国連が定めた、女性に対する差別撤廃と地位向上を訴える「世界女性デー」です。世界の各地域で、また日本各地でも「世界女性デー」を記念し、さまざまな集会が持たれました。
日本は、国連の女子差別撤廃条約を批准してから来年でちょうど30年を迎えます。条約が女性の人権にかかわる人権条約として「法的拘束力を持つ」という認識が日本は締約国として希薄だ、と、残念なことにこの間国際機関から度々指摘されてきました。国会も十分に応えられず、恥ずかしく私も反省をするのですが、自民党政権は基本的に「条約には法的拘束力がない」との立場で度重なる勧告受け入れを拒んできました。
そして、昨年発表された世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数、男女の平等度指数です。日本は136ケ国中105位で、前年から4つ前々年からは7つも下げ、政治参画分野に至っては136ケ国中127位に。日本はアジア地域で最も長い民主主義国家であるにもかかわらず、今やこの地域の平均値を引き下げる元凶です。男女平等で世界の周回遅れの国が日本なのです。
こうした状況下で、安倍総理は国連総会やダボス会議で「女性の活用」「女性が輝く社会」を繰り返し述べたわけです。首相補佐官や事務次官らに初めて女性を起用し、2020年までに女性の登用30%実現へ向け強力に取り組むとお話になっています。この流れを、安倍総理の強力なリーダーシップと持ち上げ表現されることが多いのですが、私たち民主党政権下で取りまとめた男女共同参画の第3次基本計画が、今の政権にプレッシャーを与えていると私は考えています。というのも、基本計画の中に「クオータ制」=女性の割当制のことですが、これを初めて具体的に書き込み、内閣府を中心に議論を重ねてきたことが今のこの流れに大きく影響しているからです。
一方で、安倍総理は、海外で雄弁に語る言葉とは裏腹、国内では理解に苦しむ政策を進めています。
私は、女性差別撤廃条約の実現を図ることこそが「女性が輝く社会」に最も必要な政策だと思っているのですが、残念ながら、昨年の民法改正の議論でも明らかになったように「家族を壊す」と法案に反対の意見が与党から噴出、法務省が予定をしていた戸籍法改正には至りませんでした。また総理周辺の戦時性暴力問題での発言などを聞いても、この政権は「女性の人権」という視点が欠落しているのではと感じることばかりでした。
経済のために「女性の活用」との言われ方も多くなっていますが、経済活性化に女性を利活用するとの文脈は、人権を後回しにしているのではないでしょうか。
男女雇用機会均等法の改正は施行規則の改正にとどまり、抜本的な見直しは先送りされました。パート労働法改正案は労働政策審議会での議論が十分に反映されない法案となり、派遣労働規制の実質廃止と言える派遣法の改悪案。派遣労働者の6割、登録派遣のほとんどは女性であり、ILOの勧告も踏まえて労働法制改悪に対して国会で戦っていかねばならないと思っています。
ところで、先日院内で開かれた「国際女性デー」を前にした集会で、『昨今の東アジアを取り巻く政治状況について、軍事力中心・成果主義中心など男性政治が横行しているのではないか、山積する課題に、東アジア各国の女性議員のネットワークや連帯で「違う政治」を試みる必要があるのではないか』との研究者からの報告があり、未だ十分な女性議員を得たことのない日本ですが、少しでも世界標準に近づく議員確保に取り組みなさいと、党の男女共同参画委員長の私の背中を押していただくような議論になり、とても励まされました。
あの大震災から丸3年。震災や防災に対する女性の視点が大きな課題として浮上しましたが、復興の加速にも女性の視点が欠かせないのは論を待ちません。地域で活躍する女性の皆さんと連携しつつ、被災地、被災者の皆さんのためになお頑張って参ります。
そして、ジェンダーギャップ指数105位、政治分野127位の汚名を返上し周回遅れを取り戻せるよう、安倍政権の女性政策を強力にチェックして、本当の意味で女性が輝く社会を作るために頑張ります。
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