郡和子のコラム
2014年04月20日(日)
消費者の選択に資する正確な情報の提供&高齢者等の被害を未然に防ぐ
消費者庁は先月、商品の欠陥や悪質商法などによる消費者被害が、平成25年に約6兆円に上ったとする推計を公表しました。
被害に遭ったのは13人に1人の割合で平均被害額は約59万円。6兆円というと、2013年の国内総生産(GDP)478兆円の1・2%に相当します。改めてこんなに多いのかと驚きました。
ところで、今、私が野党筆頭理事を務める消費者特別委員会で、「景品表示法」と「消費者安全法」の二つの法案をまとめ「不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律案」が審議されています。
これは、昨年発生した外食メニュー表示の虚偽表示問題や、深刻化を増している高齢者等の消費者被害問題に対応するものです。
去年問題となった食材の虚偽・誤認表示のケースでは、7年以上も前から継続していたというものもあり、このような事実が長期間明らかにならなかったのは、従業員などによる公益通報が全く機能していなかったということだと思います。
私は、コンプライアンスの観点からも、実効性ある公益通報者保護制度の必要性がより明確になったと思っています。
公益通報者保護制度が機能し、食品虚偽・誤認表示等の不正が公益通報によって防止あるいは是正できるように、通報者の範囲の拡大や通報対象事実の範囲の拡大、また外部通報の要件の緩和や外部通報先の範囲の拡大等により保護される範囲を広げ、また、公益通報を理由とした不利益取扱い等を行った事業者に対するペナルティの導入等についても検討すべきでしょう。
(残念ながらこの視点は改正案には盛り込まれていません。)
また、違反した場合、課徴金が設けられることになるのですが、この対象事案に「不実証広告」を入れるかどうか今後検討するとして当面は先送りのようです。
表示された効果・性能が事実であることが証明されない広告、それが不実証広告。
消費者相談窓口には、例えば健康食品や健康器具、エステ、美容医療等で、不適切な表現や広告が見られ、中には生命・身体に影響を与える危害トラブルの相談も後を絶たず寄せられているということです。効果性能が実証されていない広告についても課徴金の対象に含めるべきだと私は思っています。
課徴金制度の詳細設計は、6月をめどに消費者委員会から出される答申を受け、速やかに法整備をする方向との大臣の答弁を引き出しましたが、これもしっかり見ていかねばなりません。
そして、高齢人口の増加率を大きく上回るペースで相談が急増している高齢者の消費者被害。
悪質商法の手口は巧妙化しています。二次三次被害に遭う高齢者も増加していて、相談1件当たりの契約金額、支払額も高額化し、とても深刻な問題です。
そこで今回の法改正で、地域の見守りネットワークを構築し、関係機関により構成される消費者安全確保地域協議会が設置され対応することとされています。
地域で見守り活動を行う消費生活協力員や消費生活協力団体を構成するのですが、これが、機動的に運営できるのかちょっと心配しています。福祉分野の地域包括センターを念頭に置いているようなのですが、現実にどう被害回復に繋げるか、そこがよく見えません。
先日、法テラス東京の太田晃弘弁護士からお話をお聞きする機会がありました。
太田弁護士は、高齢者・障がい者は、自分の状況が問題という認識が薄かったり、困っていても法的問題と気づかない、弁護士を使うという発想がないことから、被害が深刻化しても誰も気づかないケースが少なくないと言います。
身近に関わる福祉の方が、早期に弁護士に橋渡ししていれば被害が広がらなかっただろうと、自分で、アウトリーチ=出かけていって相談に応じている事例をお話しいただきました。
この司法との連携が不可欠です。
今回、消費生活相談員等が法的に位置づけられ、処遇の改善など期待もされますが、新しい資格試験機関がどうなるのかや消費生活センターの民間委託化など、まだ地方消費者行政の姿がはっきり見えません。
相談員の皆さんが積み上げてきた知見の継続性が懸念されるような状況はさけなければなりませんし、相談員等が法執行という業務につなげるためにも、それぞれの自治体で消費者問題の担当拡充がなければ法の精神は生かされません。
年間6兆円にもなると発表された消費者被害に対応するためにも、しっかり審議し、よりよい法律にして、世に送り出したいと思います。
2014年04月06日(日)
社会保障と税の一体改革は何処へ?
4月1日から、消費税率が5%から8%へ引き上げられました。3月末までは増税前の駆け込み需要で、一部の日用品や高額商品の売り上げが増えたということですが、これからは増税による反動減が心配されます。
3月の春闘では、大企業が相次いで久しぶりにベースアップを行うと発表しましたが、満額回答した企業は少なく、経営側はやはり景気回復の先行きを慎重に見ていると考えてよいでしょう。残念ながら、ベースアップや昇給は、消費税の3%アップを上回る上昇になったわけではなく、そして、すべての企業がベースアップや昇給に踏み切れたわけではありませんでした。
こうした中で、消費税率が3%引き上げられ、増税が景気に与える影響は多くの人が予想している以上に大きくなるのではないかと私は心配します。
この一年間の景気の経緯を振り返ると、マネタリーベースを増やすという異次元の金融緩和によって円安になり、株価が上昇し、持っている資産の評価額が増えることで、企業業績が上がった様に見えているわけです。
この間の物価上昇は、円安で仕入れ価格が上がることに伴うコストプッシュ型のインフレである部分が高く、需要が伸びて物価が上がるディマンドプル型のインフレに変わるのであれば、増税のインパクトは小さくて済むのかもしれませんが、そうではないことが問題だと思っています。
民主党は苦渋の思いで消費税増税を決断したことを改めて思い出しています。当時、党内の議論は連日紛糾し、厳しい議論を経ての決断でした。理由は、社会保障の充実と安定化、そして財政再建のために、やむを得ない、と考えました。そして三党合意を経て「社会保障と税の一体改革法」が成立したわけです。
しかし、その3党での合意は何処かへ飛んで行ってしまいました。安倍政権は当初の理念と大きくかけ離れて、消費税増税分5兆円のうちのたった5千億円しか社会保障の充実に当てず、一方、公共事業は3、7兆円も増やし、財政再建も後回しになってしまっています。
今、国会で議論されている政府提出の「医療介護推進法案」は、一番重要な介護予防の要支援サービスが大幅にカット、財政も抑制されるなど、いわば、社会保障の切り下げ法案ともいえるものになっています。
大企業には政府が法人税の減税をしてまで賃上げを要請したわけですが、政府自身が決めることのできる介護・障害分野の処遇改善は放置され、福祉分野の労働者の賃金は実質引き下げられることになります。
さらに今度の法改正で、市町村が独自の判断で自由に訪問介護や通所介護の単価を決めることが可能になり、サービスの地域間格差の拡大も心配されています。
私たちは、今後、団塊の世代が高齢者となる時代を迎え増え続ける介護ニーズに対応できる社会基盤の整備を進め、消費税増税分の財源を介護等人材確保のために充てるなど、将来不安の払拭に努め、医療介護を成長産業として位置づける対案を作り提出しました。これには民主党の他の野党5党にも共同提案者になっていただきました。
GDPの約6割を占めるのは個人消費です。国民の将来不安を払拭して貯蓄から消費への転換を促すためには、医療・介護や障害者福祉といった社会保障を安心できるものにすることが不可欠。そのための安定財源を確保することがまさに社会保障と税の一体改革だったはずです。
消費増税分が真に社会保障の充実に使われるために徹底して議論してまいります。
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