郡和子のコラム

2014年04月06日(日)

社会保障と税の一体改革は何処へ?

4月1日から、消費税率が5%から8%へ引き上げられました。3月末までは増税前の駆け込み需要で、一部の日用品や高額商品の売り上げが増えたということですが、これからは増税による反動減が心配されます。

3月の春闘では、大企業が相次いで久しぶりにベースアップを行うと発表しましたが、満額回答した企業は少なく、経営側はやはり景気回復の先行きを慎重に見ていると考えてよいでしょう。残念ながら、ベースアップや昇給は、消費税の3%アップを上回る上昇になったわけではなく、そして、すべての企業がベースアップや昇給に踏み切れたわけではありませんでした。

こうした中で、消費税率が3%引き上げられ、増税が景気に与える影響は多くの人が予想している以上に大きくなるのではないかと私は心配します。

 

この一年間の景気の経緯を振り返ると、マネタリーベースを増やすという異次元の金融緩和によって円安になり、株価が上昇し、持っている資産の評価額が増えることで、企業業績が上がった様に見えているわけです。

 

この間の物価上昇は、円安で仕入れ価格が上がることに伴うコストプッシュ型のインフレである部分が高く、需要が伸びて物価が上がるディマンドプル型のインフレに変わるのであれば、増税のインパクトは小さくて済むのかもしれませんが、そうではないことが問題だと思っています。

 

民主党は苦渋の思いで消費税増税を決断したことを改めて思い出しています。当時、党内の議論は連日紛糾し、厳しい議論を経ての決断でした。理由は、社会保障の充実と安定化、そして財政再建のために、やむを得ない、と考えました。そして三党合意を経て「社会保障と税の一体改革法」が成立したわけです。

 

しかし、その3党での合意は何処かへ飛んで行ってしまいました。安倍政権は当初の理念と大きくかけ離れて、消費税増税分5兆円のうちのたった5千億円しか社会保障の充実に当てず、一方、公共事業は3、7兆円も増やし、財政再建も後回しになってしまっています。

 

今、国会で議論されている政府提出の「医療介護推進法案」は、一番重要な介護予防の要支援サービスが大幅にカット、財政も抑制されるなど、いわば、社会保障の切り下げ法案ともいえるものになっています。

 

大企業には政府が法人税の減税をしてまで賃上げを要請したわけですが、政府自身が決めることのできる介護・障害分野の処遇改善は放置され、福祉分野の労働者の賃金は実質引き下げられることになります。

さらに今度の法改正で、市町村が独自の判断で自由に訪問介護や通所介護の単価を決めることが可能になり、サービスの地域間格差の拡大も心配されています。

 

私たちは、今後、団塊の世代が高齢者となる時代を迎え増え続ける介護ニーズに対応できる社会基盤の整備を進め、消費税増税分の財源を介護等人材確保のために充てるなど、将来不安の払拭に努め、医療介護を成長産業として位置づける対案を作り提出しました。これには民主党の他の野党5党にも共同提案者になっていただきました。

 

GDPの約6割を占めるのは個人消費です。国民の将来不安を払拭して貯蓄から消費への転換を促すためには、医療・介護や障害者福祉といった社会保障を安心できるものにすることが不可欠。そのための安定財源を確保することがまさに社会保障と税の一体改革だったはずです。

 

消費増税分が真に社会保障の充実に使われるために徹底して議論してまいります。


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