郡和子のコラム
2014年07月13日(日)
ディーセント・ワークへの転換こそ成長の柱
「世界で一番ビジネスがしやすい国」。ご承知のように安倍政権が目指す政策の柱の一つです。
そのために今年の通常国会で用意された労働関係法案の一つが「労働者派遣法改正案」でした。
中身は、派遣労働の期間制限のない専門26業務の規制を取り払うこと、派遣期間について派遣先企業は労働者を変えれば継続して派遣労働者を受け入れられるようにする、などの、大幅な規制緩和を盛り込んだものでした。
つまり、どんな業種の企業でも永続的に派遣社員を使い続けることができ、しかし個々の派遣社員は自動的に3年でクビ、一生派遣でいいなら会社に置くこともできますよ、というものです。
私たちは、正社員から低賃金の派遣労働者への置き換えが進む危険性があり、若者の雇用環境が悪化している中、不安定で低賃金の派遣労働が増えることは日本の未来にとって問題だと指摘し、また連合の皆さま方も幾度にもわたる集会や国会請願などを行ってくださり、派遣法改悪案は、衆議院の審議の段階で廃案に持ち込むことができました。
しかし、秋の臨時国会では、「世界で一番ビジネスがしやすい国」のための環境整備として、労働法制の改悪が着々と準備されています。
同じ内容で派遣法改悪法案もまた出される予定です。
また1日8時間、1週間40時間といった労働時間に関するルールを見直し、一定年収以上の労働者をその労働時間ルールの対象外にする制度「ホワイトカラー・エグゼンプション」と呼ばれる制度の導入。どれだけ働いても残業代が支払われない、「残業代ゼロ法案」です。
OECDの2014年3月発表のデータによると、日本の男性の労働時間は世界で一番長く、フランスの実に2倍の長さです。残業代ゼロ法案が成立すれば、実労働時間も把握されなくなり、さらなる長時間労働に拍車がかかりかねません。過労死に直結するのではないでしょうか。
秋の国会には、この他にも、限定正社員制度、解雇の金銭解決など、働く皆さんの暮らしに大きく影響を与える法案が目白押しで出てくると思われます。
世界で一番ビジネスしやすい国とは、人件費のコストを下げ企業の競争力を高めようというものにほかなりません。
女性の活用も安倍政権の成長戦略で柱の一つだと言いますが、ただでさえ不安定で安いのが女性の労働市場です。一旦家庭に入った女性たちを、労働力不足を補う「道具」として「活用」する本音が見えてきます。
女性の活用の仕方は2通り。
一つは、正規の総合職として男性並みに働かせ使い倒す、もう一つが、非正規の労働力として安く使い捨てる、です。
これでは、女性の輝く社会にはなりません。
国連の女性差別撤廃委員会からは、選択的夫婦別姓の導入や再婚までの期間の男女差の是正、婚外子差別の撤廃などを速やかに実施するよう長期にわたって勧告を受けていながら、自民党は無視してきました。特に安倍政権は現実と齟齬をきたしている古い家族の姿が国の基盤と考えていて、女性の人権については後回しです。(日本学術会議も先日、これらの民法改正を提言くださいました。)
女性の活用を言うのであれば、まずは男女共同参画社会の実現です。
アメリカ型の新自由主義に下った弱肉強食の競争社会ではなく、人権を重んじ北欧型の包摂する社会を作ることをめざし、これまで以上に政策をブラッシュアップしてまいります。
生活や雇用、将来への不安を解消し、幸福度を上げることに重きを置いて、男性を含む全ての労働者の働き方を「ディーセント・ワーク」へ転換することが、私は、持続的成長の柱になると確信しているからです。
偏狭なナショナリズムを煽り個別的自衛権や警察権で対応可能なものまで無理やり集団的自衛権の行使がなければ国民を守れないと捻じ曲げ国民の声も聴かず閣議決定を強行した安倍政権の欺瞞。
雇用政策も成長戦略も安保政策も、欺瞞に満ちています。戦って参ります。
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