郡和子のコラム

2014年07月25日(金)

急ぐべきは「復興」

東日本大震災の復興状況視察のため、天皇、皇后両陛下が、3日間宮城に入られて、被災した皆さんを励まされました。とてもありがたく思いました。

 

一方で、復興の進捗に心配されることが河北新報の7月24日付けの一面に掲載されました。

『東日本大震災からの復旧復興事業用地として、宮城県が取得を予定している土地の地権者が6月末時点で約1万3400人に上ることが23日、県の調査で分かった。土地取得にはそれぞれから同意を得る必要があるが、既に死亡した地権者の場合は相続人が平均で8人になるとみられ、作業は難航している。』

相続人の居住地は全国各地に散らばっていて、海外在住の場合は連絡を取ることが難しく、また、亡くなった複数の地権者の名義になっている土地の場合の相続人は数十人単位に及び、交渉がとても困難。

県は今後、土地収用手続きも検討するとしていますが、相続人を含む全地権者は最終的に約2万人上ると想定され、来年度までに取得を完了できるかどうか難航も予想されるいうことです。

 

宮城県が今後検討するという土地収用法、ここにも課題が残っています。

収用法には「緊急使用」という収用前に着工できる制度があり、現行法は、簡単に言えば、「6か月後にちゃんと権利調査が終わって書類がそろえば先にやってよい」という制度になっているのですが、それを、「1年後になってもいい」と緩和する法改正を復興特区法の中で行いました。つまり復興地に限りの改正。また50戸以上の住宅整備が対象ですが、復興地の防災集団移転促進事業の大半を占める戸数の少ない用地確保に対応できないとして、5戸以上の整備用地を収用の対象と改正致しました。

しかし、これでは不十分。

土地収用法を使うとしても、申請時には土地調書の添付はなくてもいいものの、一年後までに膨大な調査を終え提出する必要があるわけです。

 

だからこそ、私たちは、もう一段の法改正、というよりも、復興特区における新しい土地収用法を準備し国会に提出しました。

でも、政府・与党はこれを一顧だにしませんでした。

 

私たちが準備した法案は、早期の権利取得と私有財産との適正な調整を図ることのできる制度を創設するもので、この法改正で、復興整備事業に用いる土地の収用・使用に係る特別の措置を定めるものです。

その中身は、(1)被災関連市町村等による復興整備計画の告示を行う(2)特例事業者が新設される「用地委員会」に対する採決の申請を行う(3)2週間の縦覧の後、用地委員会による権利取得裁決、補償金の納付を行う(4)用地委員会による補償裁決を行う―という手順になっていて、補償裁決については6カ月経過時点で仮裁決を行って補償金の払渡し等を行い、早期着工に繋げる。また、(3)の縦覧後、異議申し出がない場合には、補償金予納の上、直ちに手続中使用裁決を行い早期の工事着工を可能にする。

こうした改正で、運用改善等では対応が限界とされている土地の収用・使用を迅速に行うことができ、手続面での憲法問題もクリアできると、弁護士会の皆さんにもお墨付きをいただいたのですが、法案審議もされないまま通常国会が閉じてしまいました。

 

安倍総理は、国会答弁の中で、民主党に対し過剰に攻撃をし貶める発言を繰り返し、野党などほとんどいないとばかりにやりたい放題、与党も不誠実な国会運営に終始しました。

安倍総理の頭の中では、復興はすでに政策の重要度が相当低くなり、あるいは外れてしまったようにも感じます。

急ぐべきは、集団的自衛権の行使容認ではなく、原発の再稼働ではなく、被災地の復興であり、福島の再生ではないでしょうか。

 

河北新報の6月末の記事にも胸が痛みました、被災3県の仮設住宅で誰にも気づかれず亡くなった1人暮らしの住民の、いわゆる「孤独死」が、4月末時点で112人に上るという記事です。宮城県が51人で最も多かったということです。

一日も早く安心できる住まいを、そして一日も早く安心できる生活を取り戻していただくために、立法府がやらねばならないことをしっかりやろう、と、声を上げ続けます。


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