郡和子のコラム
2016年05月03日(火)
安保法制改正後の憲法記念日に
日本国憲法は3日、施行から69年を迎えました。
昨年9月、怒号の中で強行採決され、深夜の国会周辺に多くの反対の声をあげる人々が集まっている中、成立させられた安保関連法。
これまでの政府解釈では「違憲」とされてきた集団機自衛権の行使を容認して、海外で武力行使することを可能にする道を開き、初めて迎える憲法記念日です。
改正案が成立してからも、憲法9条に違反するのではないか、立憲主義に反する、と、多くの皆さんと共に声を上げ続けてきましたが、政府は正面から説明することを避けたまま、です。
とても由々しきことだと思います。
今日は一斉に、報道機関が行った憲法改正について世論調査が発表されています。
毎日新聞が行った全国世論調査は、憲法9条について「改正すべきだと思わない」とする人が52%で半数を超え、「改正すべきだと思う」とした27%を大きく上回り、また、NHKの世論調査でも、「改正する必要があると思う」は27%、「改正する必要はないと思う」が31%、「どちらともいえない」が38%でした。さらに、朝日新聞の調査では、「変える必要はない」が昨年の調査の48%から55%に増え、「変える必要がある」は昨年の43%から37%に減ったと、伝えています。
他の報道機関の調査も、おおむね同じように「改正すべきでない」が「改正すべき」を上回っていました。
さて、昨年の憲法記念日に、私は、「憲法記念日に吉野作造を偲ぶ」というタイトルで、吉野作造とポツダム宣言の関係、そして日本国憲法へのつながりをコラムに乗せました。
なぜ、明治憲法下の日本が、吉野をはじめとする大正デモクラシーのような一定の成果を上げながら、ひたすら戦争に突き進んでいったのでしょうか。
そして、そのことへの根本的な反省をして来たのでしょうか…。
第二次世界大戦後、各国で、大戦の悲劇を踏まえ、軍国主義を防げなかった憲法の意義をとらえ直す動きが起こったといいます。
その結果、
一、憲法制定権力として、国民が統治権力による権力の乱用を防ぐ仕組みを作る。
二、基本的人権の保障を徹底する。
三、「戦争は立憲主義の最大の敵」という考えで、平和国家への志向を憲法に明記する。
などの原則が強調されたのだと、京都大学名誉教授の佐藤幸治氏が語っています。
つまり、戦後作られた日本国憲法は、GHQ(連合国軍総司令部)の押し付けだけではないのだ、と、佐藤教授が言っておられるわけです。
私も、世界が望んだ平和と、吉野の思想がようやく形になったのが、日本国憲法であり、そして、私たちは戦後この間、憲法の理想に少しでも近づけるように歩んできたのだと思います。
ところで、日本国憲法の「国民主権」「平和主義」「基本的人権」尊重は、憲法の三大原則として誰しもが習った記憶があるのではないでしょうか。
「国民主権」で一番重要なのは、選挙を通じて代表機関である議会、もしくは国民投票などを通じて主権を行使し、その責任も国民に帰趨する、つまり、投票行動で、意思表示をすることが、国民主権の基本であるということです。
有権者の皆さんが、自分たちの代表として国会議員を選び、その議員による議論で有権者の皆さんが望むことを間接的に行ってもらう、そのために唯一の意思表示の機会を大切にしていただきたいと思います。
勿論、政治家自身が皆さんから政治を任せたいと感じてもらえる存在になることも、そしてその努力を重ねることも忘れません。
この夏の参議院選挙は、18歳の皆さんから投票が可能です。
若い皆さんに政治を身近に感じてもらえる努力も致します。
一方で、今、学校での政治教育・主権者教育に、現場の圧力が強まっている事、また、教科書への政府の介入が深まっていることは気になる所でもあり、だからこそ、なお一層、憲法の意義を再確認するべき時、と、思うのです。
尚、内閣が強い権限を持つ「緊急事態条項」の必要性が政府与党から強く発せられています。これは、いわば「緊急事態条項なら国民に受け入れられやすい」という所謂「お試し改憲論」。
しかし、既に警察法や自衛隊法などにも仕組みが存在し、対応は可能です。
例外的権限を憲法に導入すれば、誤用、乱用、悪用の危険が増してくるのではないでしょうか。
自民党の憲法草案の緊急事態条項は、『緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において、国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。』とあります。
緊急事態条項は一時的でも、憲法で定める三権分立を停止して、基本的な人権を制限しうるものです。
こんな「お試し改憲」は許されないと、強く思っています。
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