郡和子のコラム

2016年11月27日(日)

年金の議論が封じられた 

「年金カット法案」。

正式名称は「公的年金の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」と長い名前ですが、年金を「抑制」する法案なのでそう名付けました。

物価と賃金で下落幅がより大きいほうに合わせて年金も減額するという提案で、私たちの試算では、年金支給額は現在よりも5,2%減少。

2014年のデータにこの新たなルールを当てはめると、国民年金は年間約4万円減、厚生年金では年間約14,2万円減ることになることが判りました。

安倍総理は、衆議院の厚生労働委員会で、「法案の不安を煽っている」「みなさんの信用が上がることはありませんよ。民進党の支持率が上がるわけではないんですよ!」「民主党時代年金について何もしてこなかったじゃありませんか」と、発言されました。

民主党政権の社会保障と税の一体改革では、1:基礎年金国庫負担割合2分の1の恒久化。2:年金生活者支援給付金の創設。3:受給資格期間の25年から10年への短縮。4:被用者年金一元化。5:短時間労働者への適用拡大(対象約25万人)。6:年金給付特例水準の解消。7:厚生年金の産休期間中保険料免除。8:遺族基礎年金給付対象に父子家庭を追加―などの法改正を行いました。

また消えた年金記録5千万件の統合を進め、受給者へお返しもしました。

安倍総理の発言は事実と違います。撤回と謝罪を求めたいと思います。

その上、安保法制のどさくさに紛れて「消えた年金」の発覚後に設置した国民からの申し立てを審査する総務省の第三者委員会を15年6月末に廃止、結局、持ち主がわからない年金記録は15年5月現在で約2000万件も残ったままになっています。

今の若者たちが、将来、安定した年金を受けとる必要性について、異論はありません。

でも、年金受給額が減ることで、今の低年金者がどんな深刻な打撃を受けるのか、政府与党はその実態を把握して対策を講じる準備があるのか・・・。

生活していける年金額の確保、現役世代が信頼できる持続可能な制度とするために、さらなる改革、抜本改革が必要で、まだ議論は尽くされていません。

実際、単身高齢者の基礎的消費支出は7.2万円で、しかし、現在の基礎年金の水準は6.4万円、今の若者が65歳になったときにもらえる「想定された年金水準」は5.2万円、どうでしょう、生活を賄うことは出来るのでしょうか。

今回の年金法案には最低保証機能への配慮がありません。

低年金者に対する最低保障機能の強化や、被用者は原則厚生年金に加入することを目指しさらなる適用の拡大推進、そして、GPIFによる年金積立金の運用は低リスクで市場を歪めない方法の確立、課題は山積です、提案も致しましたが、残念ながら、一方的に議論が閉ざされてしまいました。

委員会での25日夕方の強行採決は、一強体制の驕り以外の何ものでもありません。


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