郡和子のコラム

2006年01月05日(木)

伊坂イズム「魔王」にのっかって

仙台を中心に執筆活動をされている伊坂幸太郎さん。

何度も直木賞候補に選ばれている大好きな若手小説家である。
今年こそ!と、かげながら応援している。
昨年10月講談社から出版された「魔王」にのっかって、コラムを書かせていただく。

本の冒頭紹介されているのは、~ボブディラン・時代は変わるから「とにかく時代は変わりつつある」、太宰治・苦悩の年間から「時代は少しも変わらないと思う。一種の、あほらしい感じである」~

そして、伊坂イズムを発揮する中身は、といえば・・・。

ムッソリーニを彷彿させる若手政治家が人々の心を鷲掴みにし、国民投票・憲法改正の選択を迫ろうとする。
この若手政治家・犬養に、宮沢賢治が好きだと言わせ、賢治の詩の一説を演説させたりして。

「諸君はこの颯爽たる
 諸君の未来圏から吹いて来る
 透明な清潔な風を感じないのか」

思い切ったことをやる決断力と、自信と、他人の恨みを買っても平然としている肝を持つ政治のリーダーとして、日本に選択を迫るのだ。それに抗うように腹話術の超能力を持った主人公が「念」を送るのだが。

伊坂さんは東北大学の法学部を卒業している。
なるほど法学部出身者だとうなずく憲法観、政治観と、面白く読ませてもらった。
以前、ラジオの番組で対談させてもらったのだが、実にナチュラルなそして穏やかな人柄で、ますます好きになった。
今回の作品は、今の社会の中で、何も考えられないまま、考えないまま、大きなうねりが押し寄せていることへの警告でもある。と、思う。

主人公に言わせている。「国民は、犬養の思うがままに誘導される。説明もないのに、いいように解釈して、物分りが良く、いつの間にか、とんでもないところに誘導される。『まだ大丈夫、まだ大丈夫』って思っているうちに、とんでもないことになる。」

昨年、国民投票について民主党は提案している。憲法についても。
自民党の憲法調査会が出した案は、これまでの流れを見ても、最初の改正では終わらない、その次も、さらにその次も用意されている。

今の新憲法案でさえ問題が多いのに、数で押し切られるようなことがあってはならない。

民主党案であっても、問題が多いと思っている。今後の議論が必要であり、広く勉強会や討論会を全国で開く必要があると思っている。

私自身は、「すべての国民」の「国民」に対して、多少の違和感を持っている。
例えば、何世代も前から日本で生まれ日本で生活する在日の皆さんや、定住する外国人の皆さんは言わずもがな憲法の枠外である。しかしながら、世界に誇る9条を、なぜいじる必要があるのだろうか。

日本国憲法憲法制定当時の国会のやり取りを、また、次の機会に、「確認」のためアップすることにしたいと思う。


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