郡和子のコラム
2006年01月06日(金)
昭和21年6月28日衆議院
「魔王」にのっかて、の、コラムのおしまいに書いた、日本国憲法制定時のやり取り。
タイムスリップして確認しよう。
昭和21年6月25日、「憲法改正案」が衆議院本会議に上程され質疑が始まった。
進歩党・原夫次郎が「わが国が不意に、あるいは計画的に侵略される場合のことを考えれば自衛権というものまで放棄していいのか、それにはどう備えるつもりか」
吉田首相「近年の戦争は多く自衛権の名において戦われたのである。直接には自衛権を否定してはいないが、9条2項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また、交戦権も放棄したものである。交戦権を自ら放棄することで全世界の平和愛好国の先頭に立って、世界の平和確立に貢献する」
議場、大拍手。
そして、同6月28日。(タイトルにしたぐらい、このやり取りに感動したのだ)
共産党・野坂参三「戦争にも2種類ある。侵略と言う不正な戦争と、侵略された国が自国を守るための正しい戦争。戦争一般ではなく前者のみを放棄するのがもっとも的確ではないか」
吉田首相はいらだって答える。
吉田「国家正当防衛権による戦争は正常だとされるようだが、私はそのことを認めることが有害であると思う」
議場拍手。
吉田「条項の期すところは、国際平和団体の樹立にあり、それにより侵略戦争を防止することにある。ご意見は有害無益の議論と考える」
その後、芦田均委員長をはじめとする「憲法改正案特別委員会」が7月1日から活動を開始。第2項の戦力の放棄と交戦権の否認は、第1項の目的の沿ったものと、つまり、自衛のための戦力と交戦権は容認されるにいたったのだが、吉田答弁の解釈で成立する。
その後の鳩山内閣において、吉田答弁を尊重する解釈が改められ、9条の元でも自衛権と自衛のための戦力を保持できるとする、に至って、今にこうしてつながっているのだ。
ここで、当時GHQマッカーサー司令部が、なぜ、自衛を可能にする条文に改めることを許したのか、疑問が残る。戦後史の研究家がいろいろ解き明かしているが、アメリカが日本をどのように活用したかったのかも透けて見えてくる気がする。
冷戦終結後の今も、新たな脅威論を展開する中国と、そして北朝鮮、極東アジア地域をアメリカがどう制していくか、そのために、日本をどう誘導するか。日本はどうやらアメリカにとってアメリカのひとつの州なのかもしれない。
重ねて問い返してみる。本当に中国や北朝鮮が日本にとって脅威なのだろうか・・・。
そしてもう一度考えてみたい。戦争の傷跡がいえぬ中、吉田首相が熱弁をふるった9条は何を目指していたものか。
憲法改正を進めよとの社説が、昨日、読売新聞に掲載されたが、憲法問題も正念場の年になる。9条に対する私自身の気持ちは固まっている。
2006年01月05日(木)
伊坂イズム「魔王」にのっかって
仙台を中心に執筆活動をされている伊坂幸太郎さん。
何度も直木賞候補に選ばれている大好きな若手小説家である。
今年こそ!と、かげながら応援している。
昨年10月講談社から出版された「魔王」にのっかって、コラムを書かせていただく。
本の冒頭紹介されているのは、~ボブディラン・時代は変わるから「とにかく時代は変わりつつある」、太宰治・苦悩の年間から「時代は少しも変わらないと思う。一種の、あほらしい感じである」~
そして、伊坂イズムを発揮する中身は、といえば・・・。
ムッソリーニを彷彿させる若手政治家が人々の心を鷲掴みにし、国民投票・憲法改正の選択を迫ろうとする。
この若手政治家・犬養に、宮沢賢治が好きだと言わせ、賢治の詩の一説を演説させたりして。
「諸君はこの颯爽たる
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか」
思い切ったことをやる決断力と、自信と、他人の恨みを買っても平然としている肝を持つ政治のリーダーとして、日本に選択を迫るのだ。それに抗うように腹話術の超能力を持った主人公が「念」を送るのだが。
伊坂さんは東北大学の法学部を卒業している。
なるほど法学部出身者だとうなずく憲法観、政治観と、面白く読ませてもらった。
以前、ラジオの番組で対談させてもらったのだが、実にナチュラルなそして穏やかな人柄で、ますます好きになった。
今回の作品は、今の社会の中で、何も考えられないまま、考えないまま、大きなうねりが押し寄せていることへの警告でもある。と、思う。
主人公に言わせている。「国民は、犬養の思うがままに誘導される。説明もないのに、いいように解釈して、物分りが良く、いつの間にか、とんでもないところに誘導される。『まだ大丈夫、まだ大丈夫』って思っているうちに、とんでもないことになる。」
昨年、国民投票について民主党は提案している。憲法についても。
自民党の憲法調査会が出した案は、これまでの流れを見ても、最初の改正では終わらない、その次も、さらにその次も用意されている。
今の新憲法案でさえ問題が多いのに、数で押し切られるようなことがあってはならない。
民主党案であっても、問題が多いと思っている。今後の議論が必要であり、広く勉強会や討論会を全国で開く必要があると思っている。
私自身は、「すべての国民」の「国民」に対して、多少の違和感を持っている。
例えば、何世代も前から日本で生まれ日本で生活する在日の皆さんや、定住する外国人の皆さんは言わずもがな憲法の枠外である。しかしながら、世界に誇る9条を、なぜいじる必要があるのだろうか。
日本国憲法憲法制定当時の国会のやり取りを、また、次の機会に、「確認」のためアップすることにしたいと思う。
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